金融業界の転職・キャリアアップに有利な資格

(1)特定の職種に不可欠な業務独占資格 「業務独占資格」は有資格者以外が携わることを禁じられている業務を独占的に行うことができる資格で、金融の世界では公認会計士や税理士が該当します。 公認会計士であれば会計検査院や監査法人勤務の道が開かれるなど、難易度は高いものの専門職に直結する有益な資格です。取得後は独立・開業も目指せます。 (2)企業で働くために取得する資格 業務独占資格ではないものの、ある業務を行うために必須とされる資格もあります。例えば株式や債券といった金融商品の販売・勧誘を行うには、証券外務員の資格が必要です。 また、一定期間以上の実務経験があることで受験可能になるものがあります。 (3)知識習得や転職に役立つ資格 業務に直結はしませんが、財務や経理の基礎知識を習得したり、取得することで自分の能力を証明できて転職で有利になったりする資格もあります。 例えば日商簿記2級は、なくても経理の業務を行うことはできますが、多くの企業で求められる財務や会計の基礎をマスターでき、履歴書に書くことで知識のアピールになります。

自分が取るべき資格の選び方

(1)未経験の場合 受験の条件に「実務経験」がなく、合格率が高めの資格が向いています。独学で勉強するのか、それとも講座などに通って取得するのか含めて、取得にかかる費用と勉強時間のバランスをしっかり考えて選びましょう。 また、証券アナリストのようにそもそも通信講座を受けないと受験資格を得られない資格もあるので、受験要項は丁寧に確認するようにしましょう。 (2)経験者がステップアップしたい場合 証券外務員1級やFP技能士1級・CFPのように、取得することで同じ資格の下位の等級より業務範囲が広くなるほか、働く際に資格手当がつく場合があります。 一部の銀行や証券会社は資格取得を昇進や昇給の条件とし、受験費用の負担などのサポートをしています。金融業界で経験を積み、キャリアアップを図りたい方に向いています。 (3)独立開業や海外勤務を考える場合 高い専門性を生かして自分で事務所を開いたり、外資系銀行などで投資やM&A、マーケティングに携わったりしたい場合は、法律に基づくため信頼性が高い国家資格や、専門知識の修得を証明できるMBA、語学の資格などがお勧めです。 中小企業診断士や社会保険労務士、税理士や公認会計士は、企業では資格手当が期待でき、独立開業した場合、年収1,000万円も視野に入ってきます。

今からでも間に合う?金融業界の資格

比較的挑戦しやすい日商簿記から、取得までにかなりの勉強が必要な公認会計士まで、取得の流れや活躍できる業務を紹介します。

日商簿記

日本商工会議所が行う検定試験に合格する資格が取得できます。レベルは初級、3級、2級、1級に分かれており、初級は簿記の基本用語や仕組みがわかるレベル、3級は経理の基礎があり中小規模事業の経理事務ができるレベル、2級は企業の財務担当に必須のレベル、そして1級は経営管理・分析ができるレベルです。 簿記試験に合格していないと財務や経理の仕事ができないわけではありません。しかし、取得により業務に直結する知識が身に付くため、転職時に実力を示すポイントとなります。 <試験概要> 試験日:年3回(6月、11月、2月) 受験料:3級2,800円、2級4,630円、1級7,710円 受験資格:特になし ※1級に合格すると税理士の受験資格が得られる 分類:民間資格 主な就職/転職先:企業の総務・人事・経理・財務部門、税理士事務所(補助)など

証券外務員

証券外務員とは、金融商品の取引に従事する人が“持っていなければならない資格です。 証券会社や銀行ではキャリアパスの初期段階として、取得が奨励または義務づけられています。他業界からの転職でも、外務員資格があれば戦力として評価される可能性が高まります。 等級には一種外務員資格と二種外務員資格があり、一種はより幅広い取引を扱えます。具体的には、二種外務員は「公社債・投資信託の取引、株式の現物取引」を扱い、一種外務員は二種外務員の業務範囲に加えて「株式の信用取引、レバレッジ投資信託、新株予約権証券、店頭デリバティブ取引に類する複雑な仕組債・複雑な投資信託」を扱います。 試験に合格し、金融庁への登録が完了すると、晴れて外務員として活躍できるようになります。証券会社や銀行で金融商品を扱うのに必要なため、転職活動の時点で取得していれば有利です。 <試験概要> 試験日:月~金曜日の毎日(事前に申し込み全国のテストセンターで受験) 受験料:8,704円 受験資格:特になし 分類:民間資格 主な就職/転職先:証券会社、銀行、生命保険会社など

証券アナリスト

証券アナリストは、高度な専門知識と分析技術をもとに、投資の助言や管理サービスを行う証券投資の専門家です。日本証券アナリスト協会が認定する民間資格で、CMA、日本証券アナリスト協会検定会員とも呼ばれます。証券会社などで証券の分析に取り組んだり、資産運用のための投資についてアドバイスをしたりするといった働き方があります。 証券アナリストの資格は、第1次レベル(通信講座→試験3科目)、第2次レベル(通信講座→試験4科目)に合格し、3年の実務経験を認定されると取得できます。また、第2次レベルに合格し実務経験が3年未満の場合は「検定会員補」に登録でき、同称号を使用することができます。 金融の知識を体系的に習得していることを客観的に証明できるため、証券会社はもちろん、経理や会計部門などでも評価されやすくなります。 ただし通信講座を受講しなければならないため費用がかさむこと、試験に合格した後も認定には3年の実務経験が必要になることを踏まえ、キャリアについて慎重に考えてから取得に向けて動きましょう。 <試験概要> ・第1次レベル 試験日: 年2回(春・秋) 受験料: 12,400円(3科目) 受験資格: 通信講座3科目の受講(受講料一括55,500円、協会会員は割引) ・第2次レベル 試験日:6月上旬 受験料:8,200円 受験資格:第1次レベル合格、通信講座4科目の受講(受講料52,500円) 分類:民間資格 主な就職/転職先:証券会社、銀行、保険会社、資産運用コンサルタントなど

アクチュアリー

保険や金融に関わる業務のなかでも、特に「確率・統計などの手法を用いて不確定な事象を扱う」のがアクチュアリーという仕事です。保険や年金、決算などの数理業務や、リスク管理分析や長期計画の策定など、数字に強い人が向いている業務を扱います。 アクチュアリーの職務には資格がなくても従事できますが、日本アクチュアリー協会が認定する資格としての「アクチュアリー」は、生保数理などの知識修得を客観的に証明できるという利点があります。 取得には第1次試験、第2次試験に合格と「プロフェッショナリズム研修」の受講が必要です。2回の試験に合格するには最低2年かかるため、企業などで数理業務に関わりながら受験する人が多くなっています。 取得に時間がかかり難易度も高いですが、数理業務の専門職として給与水準が高く、保険会社や監査法人などさまざまな企業で需要があるのが強みです。 <試験概要> 試験日: 12月(第1次試験、第2次試験ともに) 受験料: 1科目10,000円(個人会員等は7,000円) 受験資格: 大卒または同等の学力があると認められる者、第2次試験は第1次試験の合格者 分類:民間資格 主な就職/転職先:保険会社、監査法人投資銀行、コンサルタント会社、証券会社など

経営コンサルタントを目指すなら「中小企業診断士」

中小企業診断士は、中小企業の経営課題をサポートするため、診断・助言を行う専門家であり、経済産業大臣が登録する国家資格です。企業の成長戦略策定や、実行のためのアドバイスを行うほか、中小企業と行政や金融機関を結ぶ役割も担います。 試験は知識を問う筆記試験(1次試験)と、知識の応用力を問う筆記・口述試験(2次試験)が実施されます。また、合格者を対象に15日間の実習(実務補習)が行われており、指導を受けながら実際に企業の診断、調査、分析、報告の過程を体験することができます。合格してから実務までに不安がある人には心強いサポートになります。 中小企業診断士の勉強には時間がかかりますが、企業の経営改善に取り組むための知識であり、社内での経営参画や昇進に役立てられる資格です。また、経営コンサルタントとしての就職や開業も視野に入れられます。 <試験概要> 試験日:8月(1次試験)、10月、12月(2次試験) 受験料:13,000円 受験資格:特になし(2次試験は1次試験合格者、1次試験免除者) 分類:国家資格 主な就職/転職先:コンサルタント会社、マーケティング業、企業の経営・財務部門、独立開業など

MBA(経営学修士)

MBA(Master of Business Administration)は経営学修士、つまり経営学の大学院を修了すると与えられる学位です。MBAを取得できる大学院はビジネススクールとも呼ばれ、ハーバード大学など米国の大学が有名ですが、日本でも取得することができます。 米国では企業の採用や昇進で大きく有利になるとされ、経営者を目指すには取得しておきたい学位となっています。また、米国だけでなく、経済成長が進む新興国でも注目される学位のようです。 経営者を目指し、留学を兼ねて学びたい場合は海外のビジネススクールを、社会人として働きながら学位取得を目指すなら国内のビジネススクールを選ぶと良いでしょう。かつてはビジネススクール=米国というイメージがありましたが、仕事をしながら通える日本のビジネススクールも人気が高まっています。 <試験概要> 費用:修了までの学費は海外で700万~2,000万円、国内120万~400万円 受験資格: ビジネススクールごとの受講条件による(海外では語学力の証明が必要な場合もある) 分類:学位(修士) 主な就職/転職先:銀行、証券会社(外資系、外国企業含む)、企業の経営・マネジメントなど

まとめ

「金融」といってもその難易度や主要科目は幅広く、気軽に取得できるものから、一生ものとして目指す価値のあるものまでバラエティーに富んでいます。転職やキャリアアップを後押ししてくれるような資格を選んでみてはいかがでしょうか。