【個人事業主の確定申告】家事按分の扱い方

「按分」とは、「ある基準に従って物事を均等に割り振ること」を意味しています。 個人事業主の経費精算などで用いられる「家事按分」という言葉は、「家事」、すなわち家に関する事柄に分類される費用を、事業費用として按分する、という考え方を指して用いらます。

家事按分の重要性

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フリーランスなど、自宅を仕事場としている個人事業主の場合、本来居住スペースとして使用する建物の一部が、事業のためのスペースとなります。そこには、家賃をはじめとして、電気代や水道代・ガス代などの光熱費、また電話やインターネットなどの通信費、マイカーを事業で使用する場合には車両費など、さまざまな費用が発生し、それらは「事業のために必要となる費用」=「経費」という扱いとなります。 反面で、光熱費や通信費などの請求はあくまで一括で行われ、事業経費とプライベートの費用の内訳が明確ではありません。 事業経費精算のためには、それらを「事業のために使用している分はどの程度」「プライベートで使用している分はどの程度」という、正しい目安をもとに分ける必要があり、これが家事按分の根本的な作業であると言えます。 個人事業主の家事按分は、事業のために発生する経費を明確にし、プライベートの費用と一緒になってしまっているさまざまな費用を正確に分けることで帳簿上の仕訳を適切に行い、税務署に対して、然るべき経費申請を行うことを目的とします。

家事按分の行い方

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家事按分に際し、費用をどのような基準で按分すれば良いか、という点が問題となります。 これについて、決まったルールはなく、「納得のできる根拠に従って家事按分を行うこと」、とされています。個人事業主それぞれで事業内容が違えば、使用する光熱費も、必要となるスペースも違います。「家賃の何割を経費とする」というような、一律的な取り決めは難しく、それぞれの事業に応じて、それぞれが疑いようのない計算の目安を用意し、それに応じて家事按分を行うことで対応します。 いい加減な家事按分は不正確な経費算出につながり、経費の虚偽申告につながるため、家事按分の目安を決める際には注意が必要です。

家事按分の種類と按分の方法:電気代

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事業を行うにあたって、ほとんどの場合発生するのが電気代です。自宅にいるだけで照明の電気代は発生しますし、PCなどのデバイス、通信機器などにも電気が使われます。 電気代での家事按分の場合、一般的には事業で実際に使用する時間がその目安として用いられ、全体の30%程度を事業の経費として精算するケースが多いと言われています。 これには、下記のような一般的な根拠があります。 ・一日の労働時間を約8時間として、24時間のうちの三分の一を仕事のために使用している。(33.333…%) ・休日には事業を行わないことを考慮して、やや割合を減らし、30%とする。 複式簿記の仕訳で必要となる勘定科目は「水道光熱費」が使用されます。

家事按分の種類と按分の方法:電気代(詳細)

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電気代の家事按分においては、その算出方法でいろいろと意見が分かれます。 実際には、8時間以上仕事を行っているケースも多々ありますし、家の中で使用している電気のほとんどが事業ために使われている、ということもあるはずです。 家族の電気の使用は目に見えづらく、正確に算出するには、家庭の中でどのようなものに電気が使われ、それらが何ワット程度、家族ひとりひとりによって、月にどれくらいの時間使われるか、を明確にする必要があります。 就寝中は、電化製品の待機電力以外に電気をほとんど使っていないはずで、「労働時間8時間が24時間の三分の一だから」という理由で、全体の三分の一を事業経費とするのも、少々安直なように感じられます。 また、事業にて使用される電気代も同様で、労働時間の実態と、事業で電気が使われるシーンを正確に把握して、それらを生活で電気を使用する時間と照らし合わせて、初めて正確な根拠をもとにした家事按分ができる、とも言われています。 電気のコンセントの数を目安とした家事按分が推奨されるケースも見受けられますが、より正確にその実態を算出するためには上記のような方法によって行う方がより望ましいと言えるでしょう。

家事按分の種類と按分の方法:家賃

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家賃など、住宅の費用を家事按分する場合には、主に間取りから、仕事で実際に使用されるスペースの割合を算出し、それを目安として按分が行われることがほとんどです。 例えば、マンションなど、住居の占有スペースが全体で50平米あるとして、仕事を行っている部屋が六畳の部屋であるとします。 その場合、 六畳=約9.9平米 9.9平米÷50平米=0.198 となるため、住宅の総平米数のうち、仕事に使用されるスペースが約19.8%の割合であることとなり、家賃10万円の場合、そのうちの19.8%、19800円分が経費、という計算を行うことが出来ます。 複式簿記の仕訳で必要となる勘定科目は「地代家賃」が使用されます。

家事按分の種類と按分の方法:家賃(詳細)

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例えば、事業にて料理教室などをやっている場合などには、仕事でキッチンを使用することもあるはずです。その場合にはキッチンのスペースも家事按分の対象となり、家賃に対する事業経費の割合も変動するはずです。 また、マンションのバルコニーを主に事業で使用していたり、クローゼットの中に事業で使用するもの以外が入っていないなどの場合など、それらのスペースも家事按分の対象になる、とされています。 住居のうち、どの部分を仕事で使用するスペースとするか、の判断は事業によっても変わるため、家賃を家事按分する場合にはその点に注意が必要となります。

家事按分の種類と按分の方法:水道代

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水道代の家事按分については、多くの個人事業主が行っておらず、税務署にも事業経費として認められづらい、という特徴があります。ほとんどの仕事が、水道を事業の範疇で使用することが少ないことを考えると当然ともいえるでしょう。 反面で、仮に水を多く使う作業を事業として行う場合には、水道代の家事按分が認められます。具体的には、料理を行う仕事で水を沢山使ったり、なにかを洗ったりするために水を使ったりする場合などです。 按分の目安となるのは具体的な水道の使用量で、事業の中でどの程度の水を使用するのか、を算出し、その割合を水道代の全体から家事按分として計上します。 複式簿記の仕訳で必要となる勘定科目は、この場合電気と同じく「水道光熱費」が使用されます。

家事按分の種類と按分の方法:ガス代

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ガス代も、水道代と同じく家事按分が認められづらい経費とされています。理由は水道代と同じですが、こちらも事業でガスを多く使用する場合には家事按分することができます。 按分には、水道代と同じくガスの使用量を目安として使用します。 また、複式簿記の仕訳で必要となる勘定科目は、この場合も「水道光熱費」が使用されます。

家事按分の種類と按分の方法:通信費用

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仕事の際の連絡方法として電話やメールは欠かすことのできないもので、かつ現代では、仕事でインターネットを使用することが当然となっており、通信費の家事按分は欠かせません。 通信費用の家事按分には、ほとんどの場合、使用時間がその割合の目安として使用されます。 一日8時間の仕事を平日に行うとすれば、電気代と同じようにそのうちの約30%を事業経費として算出することができます。 複式簿記の仕訳で必要となる勘定科目は、「通信費」が使用されます。

家事按分の種類と按分の方法:通信費用(詳細)

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通信の分野において、ほとんどの場合、仕事上のメールなどは24時間受信可能な状態となっているはずです。 そういった観点から、通信費の家事按分は「8時間」などと時間に区切りづらいものでもあり、特にインターネットの通信費などは、休日を除くすべての日を対象として計算するケースも見受けられます。 ひと月30日のうち、20日を営業日とした場合、家事按分として約66%程度を事業経費とする、ということを指しています。 また、電話やFAXなどは発信に費用が必要となるため、営業時間を家事按分の目安としたり、明細や発信履歴を確認するなどして、実際に事業に使用した通話のみを按分の根拠として使用します。 あわせて、家賃や水道光熱費と違って、通信費は専用の機器を設けることも可能である、という点も特徴的です。 携帯電話など、事業専用の通信機器を使用した場合には、「家事按分」という概念は無くなり、その機器の通信に掛かった費用そのものを、仕訳として「通信費」で計上することが出来ます。

家事按分の種類と按分の方法:車両費

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事業でマイカーを使用する場合には、それらに関する費用も家事按分として計上することが出来ます。 按分には、走行距離をその目安として使用することがほとんどで、仕事で実際に走った距離分を把握したうえで、それを全体の走行距離から割合として算出し、全体の費用から事業分のみを経費として計上します。 また、家賃や水道光熱費、通信費などと違って、車両に関してはいくつかの仕訳科目が想定されるのも特徴です。 仕訳で使用される勘定科目の内容は、下記のとおりです。 地代家賃・・・駐車場に掛かる費用 車両費・・・修理費用や車検のための費用、ガソリン代、洗車のための費用 損害保険料・・・各種自動車保険料 租税公課・・・各種税金 これらすべてを、上記の割合にて、一律に家事按分として経費計上します。

按分の割合について

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家事按分の中でも、家賃は毎月固定額として発生するもので、事業スペースもほとんどの場合毎月変動しないため、按分の割合も一律で同じものが使用されます。 反面で、通信費用などは月ごとに変動があるはずです。 例えば、ある月の電話代が「5000円」であるとして、50%で家事按分を行っていた場合には、その月の事業経費(通信費)は「2500円」となります。 それが別の月に、仕事上多くの電話発信が必要となったことで、電話代が「10000円」になってしまった場合、50%の按分率では事業経費は「5000円」となりますが、実際には跳ね上がった電話代のほとんどが事業のために発生した費用であるため、これでは家事按分が正確に行われているとはいえません。 通話明細や発信履歴などから正確に按分が行える場合には、その月の通信に応じて按分率を変える方がより正確で、事業主にとっても実態に即した正確な経費計上ができることで税務上の損が少なくなります。 また、会計ソフトなどを導入している場合、仕訳作業に際して家事按分を比率による自動計算にて行う仕組みになっていることが多いため、按分の割合を月ごとに変えたい科目については、手動での経費入力を行うこととなります。

家事按分のまとめ

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個人事業主の家事按分について、これまでのとおりまとめてみました。 フリーランスなど、自宅を仕事場として使用している方々にとって家事按分の概念は欠かせないもので、適切に行い、経費としての計上を確実に行うことで、所得を正確に申告することができるようになります。 特に、電気代、通信費などは、事業として日中沢山使うことにより必然的に増えていくもので、それらをプライベートの費用とするのか、または仕事上必要となった経費として扱うのかによって大きな違いが生れます。 まずは、家賃、水道光熱費、通信費、それぞれに家事按分の割合を算出し、それを全体の費用に掛け合わせることで経費算出を行ってみてください。 そのうえで、水道光熱費や通信費については、月ごとの変動が想定されるため、それらの根拠を明確にしたうえで、より正確に按分を行っていけるとなお望ましいでしょう。 税務署に対して明確に説明できるような、正しい根拠に沿った家事按分を心がけましょう。