【見込み残業とは】どこからが違法?計算方法などまとめてみた

目次

「見込み残業」とは?

「見込み残業」の別名は「定額残業制度」「固定残業代」「みなし残業」

「見込み残業」は、「定額残業制度」、「固定残業代」、「みなし残業」などの別名を持っています。どのような制度なのでしょうか? 「見込み残業」は企業が社員に対して、月あたり一定の残業時間があるものと想定し、元々の給与の中にあらかじめ想定される残業時間分の残業代を含めて支給するというものです。 社員は残業があってもなくてもこの残業代を給与として受け取ることができるため、見込み残業がない、あるいは少ない時にも「見込み残業代」を受け取ることができます。働いていなくても残業代が出るなんて、お得な感じがしますね。

「見込み残業」時間数を越えてしまった場合はどうなる?

では反対に、企業が「見込み残業」というかたちで見込んでいたよりも社員が多く残業をしてしまった場合はどうなるのでしょうか?「もしかして、残業が多かった月は残業代が出ずに損をするの……?」と不安に思っている方もいらっしゃるかもしれません。 ご安心ください。社員が見込み残業時間以上に残業を行った場合に、企業はその分の残業代をしっかりと別途支給しなくてはいけないことになっています。これは法律で定められているのです。

「36協定」で「時間外労働は月45時間」可能!

見込み残業に関しても労働基準法で定められている

残業(時間外労働)については労働基準法でしっかりと決まりが定められています。労働基準法では就業時間について原則的に「法定労働時間は1日8時間以内、1週間で40時間以内、休日は4週に4回以上」と定められています。 しかし就業している業界や職種、各企業によっても繁忙期などが異なってくることはどうしてもあります。そういった場合は、労働基準法で定められた時間以上に働かなくてはなりません。実際の労働時間をしっかり把握することが難しい業界や職種に関しては、見込み残業の制度を取り入れている企業があるようです。  原則的に定められている時間以上に仕事をすることを「時間外労働(残業)」と言います。そして、企業が社員を残業させるためには「36協定」を結ぶ必要があるのです。

「36協定」で定められている「月45時間」

36協定(さぶろくきょうてい)とは「労働者に法定時間を超えて働かせる場合(残業)、あらかじめ労働組合または、労働者の代表と協定を結ばなくてはならない。」という内容を結んだ協定のことです。労働基準法36条に規定されているために、その名前を「36協定(さぶろくきょうてい)」と呼ばれています。

(時間外及び休日の労働) 第三十六条 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、これを行政官庁に届け出た場合においては、第三十二条から第三十二条の五まで若しくは第四十条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この項において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。ただし、坑内労働その他厚生労働省令で定める健康上特に有害な業務の労働時間の延長は、一日について二時間を超えてはならない。

この36協定の中で残業(時間外労働)の限度に関する基準が定められており、「1カ月の場合は45時間、1年では360時間が上限」とされています。月45時間ということは、20日出勤するとしても1日あたりは約2時間ちょっと残業ができる計算になります。

これは違法?月45時間を越えた残業時間

年々減っている?残業時間が月45時間以下になっている業種もある

転職活動の口コミサイトVORKERSの「10万人の社員口コミによる働き方改革検証」の調査で2012年1月〜2017年10月までに「回答時に現職」であった社員のデータによると、残業時間は総じて2014年以降連続して減少している傾向にあります。 2013年が月あたりの残業時間が45時間だったのを最後に、2014年に44時間、2015年に39時間、2017年にはついに月間平均残業時間数は32時間まで減少しました。働き方改革が叫ばれ始め、企業や社員個人の残業に対する意識が徐々に変化してきていることが見えます。 しかしまだまだこの月45時間というのが守られていない企業は多くあります。これは違法ではないのでしょうか?

「特別条項付き36協定」で45時間を超えても違法じゃない?

36協定では上記に記述したとおり、1か月あたり残業時間の上限は45時間となっています。しかし実は「特別条項付き36協定」というものが存在し、これを結べば繁忙期などの場合に限り、なんと残業時間が45時間を超えてもよいことになっています。 特別条項付き36協定を結ぶと、事実上残業時間に上限がなくなり、45時間どころか残業時間数の際限がなくなってしまうのです。「青天井」などと揶揄される理由ですね。ただしこの特別条項付きの協定を結ぶ場合は、次の要件を満たしていることが必要です。

(1)原則としての延長時間を45時間などの限度時間以下で定める。 (2)45時間などの限度時間を超えた時間外労働が必要となる「特別の事情」を具体的に定める。 (3)「特別の事情」としては、予算・決算業務、ボーナス商戦に伴う業務の繁忙、納期のひっ迫、大規模なクレームへの対応、機械のトラブルへの対応など、「一時的又は突発的」かつ「全体として1年の半分を超えない」場合に限る。 (4)一定時間の途中で特別の事情が生じ、延長時間を再延長するための労使の手続を具体的に定める。 (5)限度時間を超えることのできる回数を定める。 (6)限度時間を超える一定の時間を定める。 (7)限度時間を超える一定の時間をできる限り短くするよう努める。 (8)限度時間を超える時間外労働に係る割増賃金の率を定める。 (9)限度時間を超える時間外労働に係る割増賃金の率は、法定割増賃金率を超える率とするよう努める。

「見込み残業45時間」は長い?短い?徹底比較!

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通常の36協定を結べば企業は月45時間の残業を社員にさせることが可能です。しかし単に「月45時間の見込み残業」と言われても、それがどのくらいのものなのか、いまいちピンと来ない方も多いと思います。そこで、見込み残業として月45時間という時間が設定されているのがどのくらいのものなのか、様々な基準に当てはめてご紹介します!

見込み残業月45時間を徹底比較!① 1日あたりに直すと?

月45時間の残業時間を1日あたりに直してみましょう。 月の勤務日数を少し多めの22日とした場合、毎日約2時間くらい残業をすることになります。終業の定時が19時の場合だと、毎日21時まで働く計算です。人によっては、ここに会社までの往復の通勤時間もプラスされるため、1日のほとんどを仕事のために使う生活を送ることになるでしょう。

見込み残業月45時間を徹底比較!② みんなの残業時間との比較すると?

上記でもご紹介しましたが、転職活動の口コミサイトVORKERSの「10万人の社員口コミによる働き方改革検証」の調査によると、2017年の月間平均残業時間数は32時間まで減少しているようです。 現状、社員の口コミを元にした実態調査と比較すると、「見込み残業が月45時間」の場合だと平均より10時間以上も多く残業をすることになってしまいます。現在の平均である32時間であれば、1日あたりだと約1時間30分いかないくらいの残業時間です。 月45時間という残業時間は、2013年時点くらいでは平均的であったかもしれませんが、2017年現在では「多い」残業となってきているようです。

見込み残業月45時間を徹底比較!③ 過労死基準と比べると?

近頃問題にもなっている過労死の基準と比較してみましょう。 そもそも過労死基準とは、労働者が一定の時間を超えた残業をしていて、過労死したり、脳・心臓疾患、精神疾患などを発症した場合「仕事に原因があった」とみなされやすくなる基準のことです。絶対的な基準ではありませんが、月80時間や100時間を超えて残業した場合、健康や精神に及ぼす影響が大きく、過労死と残業時間数の因果関係が強くなると言われています。 まず「月80時間残業」の場合です。1日あたりに計算すると約3時間30分の残業になります。19時が終業であった場合、毎日22時30分まで残業することになります。「月80時間残業」の基準は、「2ヶ月以上にわたって月80時間を超える残業をしていた場合、健康障害を発症する可能性が高い」という過労死基準が設けられています。 次に「月100時間残業」の場合ですが、1日あたり約4時間30分にも及ぶ残業時間数になります。19時が終業であった場合、23時半まで残業しなくてはなりません。月100時間の基準は、「1ヶ月でも月100時間を超える残業をしていた場合、健康障害を発症する可能性が高い」という過労死基準が設けられています。 「月45時間だったら、体に害はないのか~」と安心してしまってはいけません。これらの過労死基準は大勢の人の統計をもとにはじき出されている数字であり、個々人の体質の違いなどはもちろん考慮されていません。自分の現在の残業時間が心や体に害を及ぼしていないか、よくよく生活を見直してみる必要はあるでしょう。

自分の身は自分で守る!残業代の計算方法を知ろう!

「法定労働時間」と「所定労働時間」とは?

自分の身を自分で守るためには、上記のような労働基準法を知った上で、どのように残業代が計算されているかを把握する必要があります。残業代の計算方法を知る前に、まずそもそも労働時間の定義についてご説明します。 まず「法定労働時間」は、労働基準法32条で定められている労働時間の限度です。「1日8時間以内、1週間で40時間以内」というやつですね。法定労働時間を越えて社員に仕事をさせる場合は、前述したとおり「36協定」を結んで「割増賃金の支払い」が必要となります。 対して「所定労働時間」は、「企業が就業規則や雇用契約書で定めた労働時間」を指します。これは「法定労働時間の範囲内」で自由に定めることが可能なため、「所定労働時間」は「法定労働時間以下」ということになります。

見込み残業代の計算はどのようになされるのか?

上記のような労働時間の定義で言うと、残業代は法定労働時間を超えた時に支払われるのでしょうか?それとも所定労働時間を超えた場合なのでしょうか?まず1つの答えとして、「残業代」は「法定労働時間」を超過した勤務に対する手当を意味します。法定労働時間に対する残業代については、いわゆる「割増賃金」が支払われます。 「え……じゃあ所定労働時間を超えて、法定労働時間を超えない時は残業代出ないの?」と思った方もいるかもしれません。「所定労働時間は超え流けど法定労働時間を超えない残業」のことを「法内残業」と呼ばれ、「割増のない賃金」が支払われます。ただし企業によってはそれぞれの会社の規程により、「法定労働時間」ではなく「所定労働時間を超えた労働に対して割増賃金を支払う」としている定めている企業もあります。 上記の説明を数式で記述すると下記のとおりとなります。 【原則】 残業代 = 時間外労働時間 × 時給 × 割増率 = 法定労働時間超勤務時間 × 時給 × 割増率 (時給 = 基本給 ÷ 所定労働時間数) 【会社規定により「所定労働時間を超えた労働に対して割増賃金を支払う」場合】 残業代 = 所定労働時間超勤務時間 × 時給 × 割増率 (時給 = 基本給 ÷ 所定労働時間数)

残業代の計算例を見てみよう!

では実際に残業代を計算してみましょう。 月給25万円の人の労働日数を20日とし、1日7時間が所定労働時間で月間労働時間が140時間の社員が上限45時間の残業を行った場合の残業代を計算します。

1日7時間が所定労働時間、割増賃金が法定労働時間超勤務に対して払われる場合の計算

【計算方法】 所定労働時間 = 7時間 × 20日 = 140時間 時給 = 25万円 ÷ 140時間 = 1,785円 法内残業 = 20時間 時間外労働時間 = 185時間 - 160時間=25時間 割増賃金率 = 25% 【残業代】 法内残業手当 = 20時間 × 1,785円 = 35,700円 残業代 = 25時間 × 1,785円 × 1.25 = 44,625円 残業代合計 = 法内残業手当 + 残業代 = 35,700円 + 44,625円 = 80,325円

1日7時間が所定労働時間、割増賃金が所定労働時間長勤務に対して払われる場合の計算

【計算方法】 所定労働時間 = 7時間 × 20日 = 140時間 時給 = 25万円 ÷ 140時間 = 1,785円 時間外労働時間 = 185時間 - 140時間 = 45時間 割増賃金率 = 25% 【残業代】 残業代合計 = 45時間 × 1,785円 × 1.25 = 100,406円

深夜早朝勤務と休日勤務はどのように計算する?

上記の計算方法で「割増賃金率 = 25%」としたのには根拠があります。これは平日の深夜早朝勤務(22:00~05:00)に該当しない時間帯の割増率にあたります。深夜早朝勤務や休日勤務の場合の割増率に関しては、下記のとおりに計算がなされます。 法定時間外割増:25%以上 法定時間外深夜割増:25% + 25% = 50%以上 休日勤務割増:35%以上 休日深夜割増:25% + 35% = 60%以上 さらに月45時間どころか60時間を超える残業については、残業代の割増率が25%以上に替えて50%以上が適用されます。しかしこれは当面、中小企業には適用が猶予されています。

ブラック企業の言い訳?見込み残業代の計算根拠

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見込み残業の時間数を超過した分は、見込み残業代とは別途、残業代が支払わなければならないことが労働基準法で決まっていると説明しました。上記のような計算方法できちんと金額が算出され、支払いが行われていれば良いのですが、中には給与の様々なからくりを利用して、残業代を誤魔化している企業もあるだとか……? 「うちの会社は仕事はきついけど、残業代が出てるだけマシか~」と思っているあなた。本当にちゃんと残業代が支払われているか、一緒に確認していきましょう。もしかすると、毎月一定の金額をもらっているだけで違法に多く働かされているかもしれません。

見込み残業代のブラックな計算方法①「固定手当」

ブラック企業がやりがちな見込み残業代の計算方法が、「固定手当型」と呼ばれる方法です。 あなたの給与明細にも、「残業手当」「営業手当」「役職手当」「役付手当」「業務手当」「地域手当」「職務手当」「調整手当」などの名目で毎月手当が支払われていませんか?これらは「固定手当」と呼ばれており、給料に含まれている様々な手当てのことです。 実はブラック企業の中には、これらの固定手当を「見込み残業代だ」と言い張って支払っているという企業があるのです。「営業手当が見込み残業代の代わりについている」などと社員には説明をしているようです。 しかしこういった毎月支払われる固定手当を「見込み残業代」として支払うのは、専門家によると違法と見なされる場合があるそうです。このケースが違法であった場合、あなたは実は「残業代が1円も支払われていない」という場合があります。法律などを知らないばかりに、企業は口車であなたを丸め込もうとしている恐れがあります。

見込み残業代のブラックな計算方法②「年俸制」

もう1つは「うちは年俸制だから、残業代は出ないよ」と言われて、残業代が未払いのまま働かされているケースです。 年俸制とは社員の給与を1年単位で決定する制度を指します。企業によっても異なりますが、「年俸として提示された金額を12分割して1/12を月々支給」や、「年俸として提示された金額を14分割して1/14を月々支払い、残りの1/14を賞与として夏季と冬季に1回ずつ支給」のようにして支払われる給与のことです。 1年でもらえる給与額が決まっているので、「そうか、見込み残業代も含まれた金額なんだ……」と知らずに納得してしまう人もいるようです。しかし労働基準法第37条から、例え年俸制であっても、企業が残業代を支払わなくていいということにはなっていません。 会社によっては雇用契約の段階で「〇時間分の時間外労働手当を含む」と見込み残業代について明記されているところもあるようですが、こういったケースを除き、契約の範疇を超えて残業や休日出勤した場合には、年俸とは別途、企業は残業代の支給が必要となります。 見込み残業について、自分がどのような雇用契約のもとで仕事をしているのか、今一度再確認してみるのもよいかもしれません。

自分の身は自分で守ろう!こんな残業は違法になる!

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企業の口車に丸め込まれていては、自分の身を守れません。どのようなケースの残業が違法となるのかを知って、自分の働き方を見直してみましょう。

残業が違法になるケース① そもそも「36協定」が結ばれていない

上記でご紹介したとおり、企業が「36協定」を結んでいれば、1日8時間・週40時間という法定労働時間を超えた残業が可能になります。 ですが、そもそも36協定が締結されていない企業については法定労働時間を超えて就業することはできず、残業そのものが違法となります。

残業が違法になるケース② 通常の36協定の場合月45時間を超える残業はNG

36協定を締結している企業の場合であっても、残業は月45時間という上限ああります。これを超えて社員に残業させることは違法と言えるでしょう。 ただし、「特別条項付き36協定」を締結している場合は、残業時間の限度時間を延長することができます。そのため、月45時間を超える残業をする可能性も出てくるでしょう。

残業が違法になるケース③ 月45時間残業が3ヶ月続くと「会社都合退職」が可能?

通常の場合であれば、自己都合で企業を退職した場合、失業保険を受給する際に「自己都合退職」の扱いになります。ところが月45時間の残業を3ヶ月以上続けていた場合には、なんと「会社都合退職」扱いにできることがあるのです。 会社都合退職にできると、自己都合退職よりも失業保険がずっと優遇されることがあります。具体的には失業保険を受給しやすくなり、退職直後から失業保険が受給できたり失業保険をもらえる期間が長くなります。 月45時間以上の残業があったことをを証明するためには、失業保険の手続きに行く際にハローワークに証拠となるタイムカードや日報などのコピーを持っていって、残業があった旨を説明しましょう。

労働時間や残業代の計算方法を知り、違法な残業をさせないようにしよう

いかがでしたか?見込み残業について、そもそもどのようなものなのか、計算方法や労働時間との関係、なにが違法な残業にあたるのかなどご紹介しました。 国をあげて働き方改革が推奨されてきており、残業時間などは全体的に減りつつあるようですが、まだまだ改革の道半ばです。法令遵守の意識を企業や働く個々人がしっかり持ち、社会全体で残業を始めとする働き方を変えていけるようにしたいですね。