【生存バイアスとは】よく分かる心理学入門!

目次

思考回路を操る生存バイアスとは?

そもそもバイアスとは何を意味する言葉なのでしょうか? バイアスには大きく分けて3つの意味があります。 ①布の目に対して斜めに裁った布地、バイアステープの略 ②電流や電圧によって動作に偏りを持たせること ③社会調査で回答が偏る原因になるもの、偏り、先入観 認知バイアス、生存バイアスで使われるのはもちろん③の意味です。

認知バイアスとは?

私たちの考えはいつでも客観的というわけではありません。 どれだけ客観的にするよう心掛けていても、自分の知識や経験によって偏りが生じてしまいます。 そのため、見た目や普段の行動から「○○に違いない」と結論づけてしまいます。 このような思考の偏りを認知バイアスと言います。 認知バイアスは社会心理学や認知心理学の理論の一つで、判断の誤りをそれぞれに分類しています。 認知バイアスの代表的な例を2つご紹介します。 認知バイアスという言葉の意味を知らなくても、次の例を見ると「あるある!」と感じてもらえると思います。

認知バイアスの例1.確証バイアス

人間の脳は傾向や偶然の重なりから自分の中で結論を出してしまいがちです。 そんな認知バイアスの一つが「確証バイアス」です。 ・お花見、バーベキュー、旅行が連続して雨だった →私は雨男(雨女)だ ・○○さん一家は全員AB型 →全員変人に違いない 自分が出かけるときにだけ雨が降るのではなく、たまたまその日が雨だっただけなのに、雨という偶然が重なることで自分は雨男(雨女)だと誤った結論を出してしまいます。 これも認知バイアスの一種です。 また、血液型が違ったからといって脳の仕組みまで違うわけではありません。 それでも私たちは「A型は几帳面」「AB型は変人」と決めつけてしまいます。 認知バイアスによって、考え方に偏りができるのがよくわかる例です。

認知バイアスの例2.ハロー効果

私たちの脳は、優れた一面を見ることで不足している情報をカバーしようとする傾向にあります。 ・制服を崩さず来ている学生 →まじめな子だという印象を受ける ・さわやかなイケメンを見かける →性格がよさそうだと思う どちらも、他人より目立っている点を見るだけで他の面もこうに違いないと決めつけてしまっています。 服の着方だけでは、まじめかどうかは本当はわかりませんし、イケメンかどうかで性格がいいかどうかわかりませんよね。 それでも、1つが突出していると私たちの脳は勝手に推測してしまいます。 これも、認知バイアスが思考を偏らせた結果と言えます。

生存バイアスとは?

生存バイアスの意味を簡単に説明すると「生存者を基準にして判断することで誤った認識を持ってしまうこと」です。 生存バイアスは生死に関することだけでなく、成功と失敗でも同じことが言えます。

バイアス(英語: bias)とは ・偏りのこと。  「サンプリングバイアス」(標本抽出の問題により、母集団を代表しない特定の性質がまぎれこんでいる) のように統計で用いられる。 ・「あの人の意見にはUncyclopediaは無意味だというバイアスがかかっているから」 のように思い込みや思想などから考え方等が偏っていることにも用いる。

生存バイアスがよくわかる有名な例

戦闘機のどこを強化する?

生存バイアスの仕組みがよくわかる例で、戦闘機の話があります。 下の画像は、第二次世界大戦中に帰還した戦闘機がどこに被弾していたかを示した図です。 赤のドットが戦闘機の被弾した場所を表しています。

$part->part_title

ここで次の質問について考えて見てください。 「戦闘機の帰還率を高めるために、あなたなら防護のための装甲板をどこに追加しますか?」 つまり、どこを強化すれば戦闘機はより多く帰還するかということです。

答えは「赤いドットのない部分に走行板を追加する」

「赤いドットのある部分に被弾が集中しているなら、そこを強化すればいい!」と考えてしまう方も多いと思います。 しかし、よく考えてください。 この問題は被弾しながらも帰還した戦闘機が基準になっています。 空白の箇所に被弾した戦闘機は帰還できていないという視点が抜けているんです。

撃墜された戦闘機を外して考えてしまう

もちろん、赤いドット部分を強化することで被害を少なくすることはできるかもしれません。 しかし、帰還率が上がる確実な方法とは言えません。 戦闘機の帰還率を上げるには、撃墜される数を減らす必要があります。 ・帰還した戦闘機の被弾箇所から、被弾しても帰還できる箇所を予測する ・撃墜された戦闘機はどこに被弾しているかを予測する 上の図から上記の2点を読み取って答えを出さなければなりません。 しかし、生存バイアスによって赤いドットだけに考えがいってしまいます。 この問題は頭をやわらかくする問題とも言えますね。

生活の中で遭遇する生存バイアスの例

上の例は戦闘機でしたが、実は日々の生活の中でも生存バイアスがかかっている事柄はたくさんあります。 生死がかかわることだけでなく、成功や失敗に関することの方が生活場面では多くあります。 ここからは、具体的な例を5つご紹介します。

生存バイアスの例1.体罰が人を強くする?

「体罰の何が悪いの?」 「教育には体罰が必要だ!」 「昔は体罰が当たり前だった」 こういった考えを持った人は今でも一定数います。 確かに一昔前は体罰が容認されていましたし、体罰を受けて強くなれたと話す人もいます。 では、本当に体罰をすることによって人は強くなれるのでしょうか?

体罰を受けて強くなって人はほんの一握り

体罰を受けてよかったと主張する人のほとんどは成功者です。 「体罰を受けたから強くなれた!」という人の声もよく聞きます。 では、体罰を受けないと強くなれないのかというと、そんなこともありませんよね。 さらに体罰を受けたら全員が強くなれるのかというと、違います。 昔は今と違い、体罰を受けてケガをした人などにスポットが当たることはほとんどありませんでした。 ケガをしたり、後遺症が残ったり、心に傷を負った人が取り上げられることがなかったのです。 「体罰を受けて強くなった人」が成功者にあたり、他の人は淘汰されてしまっているのがわかりますね。 これも生存バイアスにひっかかっていると言えます。 今はインターネットの普及で、色んな立場の人が気軽に発言をできるようになりました。 体罰の現場を動画に撮って拡散したり、体罰を受けた人が発言したりと、以前より簡単に主張をすることができるようになりました。 そのため、体罰はよくないと考える人が増えてきたのではないでしょうか。

生存バイアスの例2.投資の成功話

「3年間で○○円儲かった!」 「これを買って損はしない!」 など儲かったのが仮に事実だとしても、本当に儲かるのか疑わしい話は世の中にたくさんあります。 ただ、多くの人は「この話は胡散臭い!」と考えると思います。 生存バイアスがかかっていると、儲かることに目が行って疑う人が少なくなるはずです。 なぜ投資の成功話には、ひっかかる人が少ないのでしょうか。

失敗をイメージできるから生存バイアスにひっかからない

確かに3年間で〇〇円儲かったり、投資で大成功した人はいるのかもしれません。 しかし大半の人は、同じことをして全員が儲かるわけではないと知っているのです。 例えば、3年の間に仲介業者がつぶれてしまったり、途中で大損して辞めてしまったり…失敗する要因がいくつか思い浮かびますよね。 なので、この例では生存バイアスにひっかかる人が少ないと言えます。

生存バイアスの例3.今どきの若者やこどもは弱いのか

「今時の若者は軟弱だ」 「最近のこどもは弱い」 とよく近頃の人を弱いと言う人がよくいますね。 自分は強い、自分の世代は強かったという考えによるものと思われます。 本当に今どきの若者やこどもは弱いのでしょうか? そして、強い若者やこどもはいないのでしょうか?

昔も弱かった人はいたはず

もちろん、ある年代生まれの人はみんな強いなんとことはあり得ません。 では、当時弱かった人はどうなってしまったのでしょうか? 今より医療技術も発展していなかったことを踏まえると、極端な話「弱い人は死んでしまった」ということもあり得ます。 そう考えると、強い人しか残っていないので納得できます。 今はいろんな情報が世の中にあふれていますが、昔は報道する術も時間も少なかったので「限られた時間で流すならポジティブな内容を」という意識が強かったようにも感じます。 昔も弱い人は一定数いたはずですが、淘汰されたり取り上げられることがなかったので、知られる機会も少なかったのではないでしょうか。 その結果、自身の世代は生存バイアスによって強い人に焦点が当てられ、今の時代の弱い人が目立ってしまうのかもしれません。

生存バイアスの例4.エアバッグを導入したらけが人が増えた!

とある村にエアバッグを導入した話

とある村には今までエアバッグを導入している車がありませんでした。 この度、自動車事故での死者数を減らすために、全車にエアバッグを導入することになりました。 導入から半年後、町で意見を聞いてみたところ 「病院に重症患者がたくさん運ばれてベッドが足りない!」と嘆きの声が聴かれました。 エアバッグを導入したことは失敗だったのでしょうか?

エアバッグ導入=事故の減少ではない

町の人はエアバッグを導入することでどんなメリットがあることをイメージしていたのでしょうか。 おそらく「自動車による死亡事故の減少」だと思われます。 エアバッグ導入以前の自動車事故のほとんどで、運転手や同乗者は亡くなっていたと思われます。 それがエアバッグの導入で重症患者が増えた=生存者が増えたんです。 エアバッグを導入しても、無傷で生き残るということは非常に難しいですよね。 確かに重症患者は増えましたが、導入以前だと亡くなっていた方が助かるようになったのです。 死亡か重症かだけでなく、生存者の数にも目を向けないといけない例ですね。

生存バイアスの例5.求人でもある生存バイアス

正社員のボーナスは平均100万円!

転職サイトを見ていると、ボーナスの例が高額な求人はよくあります。 しかし給与やボーナスの金額の下に小さく 「正社員の平均」 「入社1年後の社員の平均」 と注意書きがある場合もたまにあります。 中途入社でボーナス100万円は非常に魅力的で惹かれます。 実はこれも生存バイアスがかかった文章なんです。

全員がボーナスをもらっているわけではない

上の例の場合、正社員の平均=正社員以外のボーナスは不明と解釈できます。 中途入社で即正社員になれるなら話は別ですが、契約社員の期間が定められていたり、正社員になるには要件があったりすると、正社員になれない可能性があります。 また、入社1年後の社員の平均だと、1年以内に辞めた人はもちろん含まれていません。 ボーナス100万円に希望を抱いて入社したけれど、あまりに仕事がきつくて半年で辞めてしまった…という人もいるかもしれません。 どちらにせよ、正社員になる、1年以上辞めないと成功した人でないとボーナス100万円はもらえないというわけです。 小さく書かれた文字から、どういう人が含まれていないのかを読み取って検討する必要がありますね。

生存バイアスに引っかからない方法はある?

ここまで色々な例を見てきましたが、気になるのは生存バイアスにひっかからない方法ですよね。 残念ながら、そんな方法はありません。 「避けられないならこの記事を読んだ意味がない!」という声が聞こえそうですが、少し待ってください。 全部ひっかからないようにするのは難しいですが、勉強したり、考え方を工夫したりすることで、多少は回避することができます。 ここからは生存バイアスを避ける方法を6つご紹介します。

期待値を計算してみる

期待値は数学で習った人も多いでしょう。 実際、どんな風に期待値の計算が役に立つのか、例で説明します。 ここにサイコロがあるとします。 「1の目が出たら1200円あげます。でもそれ以外の場合300円もらいます。」と言われたら、やりますか? 「6分の5は300円あげないといけないなんて損だ!」と思う人が多いと思います。 この問題の場合、期待値はマイナスになるのでしょうか? 期待値はサイコロの目が出る確率×もらえる金額を足していくと求めることができます。 この問題の場合は 6分の1の確率で+1200円 6分の5の確率で-300円 なので1/6×1200円+5/6×(-300円)=200円-250円=-50円になります。 簡単に言い換えると、6回やるとしたら1回やるごとに50円相手にあげることになります。 確かに損なことがわかります。 ただ、偶然1回目で1が出た場合は得をします。 期待値はあくまで期待値なので、運までは考慮できていません。

確率や統計について勉強してみる

確率や統計は中学校の数学以降、何度か学習する機会があります。 習った当時は「こんなことを習って意味があるの?」と思ったかもしれません。 しかし今は大学の一般教養でも確率・統計に関する科目があるところが多いです。 なぜなら、生きていく上で確率や統計について知っていると、物事をいろんな観点から捉えられるからです。 そもそも生存バイアスや認知バイアスは統計学に拠るものなので、根幹に触れるには確率や統計について学ぶといいかもしれません。

自分の考えが全てという思い込みを捨てる

自分の間違いを認めたくないのは誰だって思うことです。 しかし、自分と違う考えを受け入れなければ、自分の考え方が生存バイアスにひっかかっているということに気づくこともできません。 「自分の考え方は偏っていない!」と思うなら、他人の意見はすんなり聞けるはずです。 他人の意見を聞いて「そんな視点もあるのか!」と気づかされた経験がある方も多いと思います。 自分と違った視点を相手が持っているからと言って、自分が劣っていたり負けていたりするわけではありません。 相手にとっては、あなたの意見も新鮮なもののはずです。 意見を言い合うことで自分の視野も広がって、少しずつ生存バイアスにひっかかりにくくなる可能性もあります。 もし自分と違った意見が苦手なら、自分の考えが全てと思い込んでると言えるのではないでしょうか。 世の中、自分が全てではありません。 他の人の視点も知ることで、より成長できるはずです。

敗者に思いを馳せる

勝者がいるということは、もちろん敗者もいます。 例えば、オリンピックの金メダリストは、自国での予選を勝ち抜いて国の代表になり、オリンピックの舞台で1位を取ります。 しかし、2位以下の人が優れていないのかというと、違いますよね。 2位以下の人も努力をして、国の予選で勝ち抜いて代表に選ばれてオリンピックに出場しているはずです。 勝った人を称えることも、もちろん大切です。 しかし、惜しくも敗れてしまった人、優勝した人と対戦した人にも思いを馳せることで更に深掘りすることができます。

思考を停止しない

生存バイアスにひっかからないためには、あらゆる可能性を踏まえて考える必要があります。 いろいろな側面から考えることで、本来の意味を知ることができます。 そのためには考え続けることが必要と言えるのではないでしょうか。 考えることをやめてしまうと、その時点で生存バイアスから逃れることが難しくなります。 生存バイアスにひっかからないようにするには、様々な角度から考え続けるのも重要です。

視野と見聞は広くもつ

この記事を読むと、冒頭の戦闘機の例を数日後に出題されても正解を言える人がほとんどでしょう。 なぜなら、質問の本当の意味を知ったからです。 つまり、経験を積むことで生存バイアスにひっかからずに考えられことが増えます。 他の人の意見を聞くようにしたり、一つのことを深く考えてみたり と、いろんな視野から考えられるよう日頃から心掛けてみるとよいかもしれません。

生存バイアスのまとめ

ここまで、生存バイアスの意味と例、ひっかからないようにする方法をお伝えしましたが、いかがでしたか? 日常生活でも、多くの生存バイアスが存在すると感じた方も多いと思います。 もちろん、生存バイアスにひっかかることが悪いことではありませんし、絶対にひっかからないということも非常に難しいことです。 しかし広い視野を持つことで避けられる可能性は上がりますし、いろんな側面から物事を考えられるようにもなります。 この機会に、確率や統計について学んでみたり、自分の考え方の傾向を知ってみたりしてはいかがでしょうか? この記事が少しでも日々の生活をよくする参考になれば幸いです。