「所存です」「存じます」正しい使い方と注意点

「所存です」の「所存」は、「思っていること」「考え」を意味しています。したがって「所存です」の意味は、「〜と考えています」「〜と思っています」です。 ビジネスの現場や目上の人に自分の考えを伝える際、「〜だと思います」よりも「〜の所存です」という言い方のほうが改まった表現となり、ふさわしい言い方であると言えます。

「所存です」は謙譲語?それとも尊敬語?

では、「所存です」はどのように使えば良いのでしょうか。 「所存です」は敬語にあたり、「思います」「考えています」の謙譲語です。相手を立てて、へりくだるときに使われるもので、「私はこのように思っております」を「私はこのような所存です」のように言い換えて使います。 ビジネスの現場や改まった場所では、基本的に相手の方を立てるものです。そのような時に「所存です」を使用します。もちろん「思っています」「考えております」でも間違いではありませんが、特に「思います」を頻発させると、幼稚な文章や言い方になりがちです。 そんなときに「所存です」と言い換えるとスマートであり、ベターな言い方となります。 さらに、より改まった言い方をしたい場合は、「参る所存です」「努める所存です」のように、動詞を用います。 このように、「所存です」を「〜と考えております」「〜するつもりでおります」と合わせて使うことで、伝える言葉にバリエーションが生まれ、その場の雰囲気で使い分けることが可能です。

「所存です」と同じ意味の敬語は?

「所存です」は「思っています」の謙譲語ですが、尊敬語として使用するときは「意向」を使います。 「所存」も「意向」も、同じ「考え」「思っていること」ですが、「意向」は相手を立てる言葉です。 例えば、自分のことを伝える場合には「今後、このプロジェクトに関してはさらに人員を投入して進めて参る所存です」「より一層の安全管理に努める所存でございます」となります。これが、相手に伺う場合には「今後、このプロジェクトに関しての人員についてはどのようなご意向でしょうか?」「安全管理についてはどのようなご意向でしょうか?」となります。 これは、第三者に報告する際にも適用されます。 例えば、客先の考えを上司に伝える際には「本日の打ち合わせでは、今プロジェクトに関しては通常より20%の増員を行うとのご意向でした」となります。 これも、「〜とのお考えでいらっしゃいました」という言い方もできますが、「〜とのご意向でした」のほうがスマートでわかりやすい言葉になります。 「所存です」とセットで覚えておくと良いでしょう。

「所存です」を使うシーン

次に、「所存です」を的確に使用するためのシーン別言い方をみてみましょう。謙譲語なので、相手を立てながら自分の考えを伝えるシーンに使います。

「あいさつに使うことで印象アップ

人事異動や入社のあいさつなど、新しい環境に入る際に使います。自分はまだ若輩者だからご指導を願いたいという意味を含めて伝えることで印象が良くなります。 「異業種からの入社ですが、早く戦力となれるようご指導を賜りながら努める所存です」 「この度はリーダーに抜擢いただきまして誠にありがどうございます。期待に応えられるよう、スタッフとともに目標達成に邁進して参る所存でございます」 「努めていこうと思います」よりは改まった場にふさわしい言い方となり、「邁進していく考えです」よりへりくだった言い方となります。

履歴書・ビジネスメール

自社のサービスを客先に伝える際に使います。履歴書や職務経歴書などにも良いでしょう。 「貴社の課題を解決し、安心して業務を進めていただけますよう、より一層の精進を重ねて参る所存です」 「これまでの経験を活かし、御社の即戦力となれるよう努める所存です」 履歴書に応募の動機を記載する際、「頑張りたいと思います」と書いてしまうと「学生っぽさが抜けていない」と思われてしまうかもしれません。そんなときにも「努める所存です」と記載することは、社会人としての常識が備わっていると好印象につながります。

謝罪の場面

謝罪の際は、ぜひとも「所存です」を使いたいものです。 「今回の失注を学びとして参る所存です」 「この度は弊社のミスで貴社にご迷惑をおかけしたこと、誠に申し訳御座いません。今後、このようなことがないよう、全社をあげて体制を整備して参る所存でございます」 「この度は貴重なご意見を賜りまして誠にありがとうございます。今後とも、安全で高品質な商品をお届けできるよう、一層の社内安全管理に努める所存です」 これも「学びとしたいです」「体制を整備しようと思います」「安全管理をしていきます」では幼稚な表現ととられてしまいます。 やはり「所存です」を使ったほうが、誠意が伝わる言い方となるでしょう。

営業やプレゼンテーションでは「所存」と「意向」の使い分けに注意

プレゼンテーションでは、自分や自社の考えの他に、関連会社や外部スタッフの考えも盛り込む場合があるでしょう。 そういったときは、自社が外部かで「所存です」「意向です」を使い分ける必要があります。 「今回のプロジェクトでは、昨年の同様案件よりもさらに人員を増加し、十分な体制の中で行っていく所存です。また、デザインの面で協力を仰いでいるA社様においても、スタッフ増員の意向と伺っております」 「貴社のご意向としましては、続行ということでよろしいでしょうか。弊社といたしましても貴社のご希望にそえるよう、更なる技術開発に努める所存です」 正しく使うことで、違和感なく考えや方向性を、簡潔に且つスマートに伝えることができます。

間違った「所存です」使い方例

敬語は慣れていないと間違えやすいものです。「所存です」も、尊敬語は「意向」となり、語尾を言い換えたり「御」をつけたりするだけでは誤用となってしまいます。 意味を確実に把握し、とっさの場合でも正しく使えるようにしておきましょう。

二重敬語

二重敬語はついやってしまいがちな誤用です。 この誤用は、「所存」は「考え」の謙譲語であることを理解することで防ぐことができます。「所存」とは、言葉を分けて表現すると「〜する所であると存じている」となり、「存じている」という謙譲語が含まれています。つまり、「所存」ひとつで謙譲語という敬語なのです。 したがって、「〜という御所存です」という使い方は間違いであることがわかります。「御」をつけて丁寧にする必要はありません。 丁寧ない方をしたいのであれば、「所存です」を「所存でございます」と言い換えることができます。客先や権威のある目上への文書にするときは「所存でございます」とすることで、より改まった印象となり、丁寧さが伝わるでしょう。

二重表現

「所存」は「考え」「思い」の意味です。したがって「〜と考える所存です」「という思う所存です」とは使いません。 「今後は遅れることのないよう早め早めの判断をしていこうと思う所存です」 「同じミスを再び繰り返さないよう、今後はチェック体制の整備を考える所存です」 これは「頭痛が痛い」「店を開店する」と同じ種類の誤用となってしまいます。意味が曖昧だとやってしまいがちな誤用なので、気をつけましょう。 上の例文を、より丁寧に伝えたいのなら 「今後は遅れることのないよう、早めの判断に努める所存です」 「同じミスを再び繰り返さないよう、今後はチェック体制の見直しをして参る所存でございます」 となります。 「ございます」に加えて、「参る所存です」「努める所存です」を使用することで、決心を強い印象で、且つへりくだった言い方にすることができます。

間違いやすい「次第です」との使い分け

「所存です」と似た「次第です」もビジネスの現場ではよく使われる言葉です。このふたつも用法を間違いやすいので、注意が必要です。 「ミスを繰り返さないようにチェック体制を整備したい次第です」 「遅れることがないよう、早めの判断に努めている次第です」 上の例文は 「ミスを繰り返さないようチェック体制をより一層整備に努める所存です」 「遅れることがないよう、早めの判断ができるよう精進して参る所存です」 が正しい言い方となります。 「所存です」は自分の考えを伝える言葉に対し、「次第です」は状況を伝える言葉です。 「次第です」を使う場合は 「外注企業に管理も任せてしまった次第です」 「判断が遅れてしまった次第です」 など、現在の状況や原因を伝える時に使用します。 「所存です」は「人の考え」、「次第です」は「状況」と覚えておくと良いでしょう。

主語の違い

「所存」は謙譲語であり、主語は自分となります。主語が相手の場合は「意向」です。 「社長も同じ御所存です」では、主語が違い間違いとなります。正しくは「社長も同じご意向です」です。「社長も同じお考えだと伺っています」も正しい使い方ですが、柔らかな印象となるでしょう。ビジネス文書や会議などで伝える場合は「ご意向です」を使う方がきちんとした印象となります。

次は「所存です」と使い方が似ている「存じます」をみていきましょう。「所存」に含まれている「存じる」ですが、こちらも同じく「考え」を示します。ただし、「所存」とは若干ニュアンスが異なります。

辞書にみる「存じます」の意味

「存じます」には「存」が含まれていますが、この「存」は「持つ」という意味を持ちます。「存じる」となることで「考えを持つ」「知識を持つ」となり、「存じます」となることで「認識している」「考えを持っている」「思っている」と変化します。 「所存です」との違いは、「〜しようと思っている」というニュアンスに対し、「存じます」は「〜と思っています」「〜だと思います」です。 つまり、「自分は現在進行形でこういう考えを持っているがいかがだろうか」という意味で使用します。

「存じます」は謙譲語?それとも尊敬語?

「存じます」は、「所存です」と同じように謙譲語です。自分が思っていることを目上や敬うべき人に対して伝える場合に使います。さらに、「存じあげております」という言い方になると、「知っています」の尊敬語となります。主語によった使い分けが必要です。

「存じます」と同じ意味の敬語は?

では、「存じます」の尊敬語はあるのでしょうか。 「考え」という意味で使用するのであれば、「所存」と同じように「意向」です。 しかし、「認識している」という意味で使うのであれば「ご存知」という言い方になります。 「お客様はすでにご存知のことと思いますが」という使い方です。この場合「お客様はすでにご存知なことと存じますが」とは言いません。 また、「知っている」を目上の人に対して尊敬語としてつかう時には「存じ上げる」となります。こちらについては後述します。

「存じます」を使うシーン

実際に「存じます」を使うシーンを見てみましょう。多くの場合、「所存です」と同じように、公の場などの改まったシチュエーション、ビジネスの現場で使用します。

お礼を述べる時

「この度はお骨折りいただきまして、誠に有難く存じます」 「お褒めの言葉をいただき、誠に恐悦至極に存じます」 など、「思います」「感じています」の意味で使います。

意見を述べる時

意見を述べる時は、相手を立てつつ自分の考えを的確に波風立たないように伝えたいものです。その際にも、「存じます」は非常に便利で相手に好印象を与えることができます。 「その件につきまして、恐れ多くも申し上げるならば、まだ時期早々なのではないかと存じます」 「現在の数字設定と指導方法については、まだ改善点があるかと存じます」 「だと思います」よりも丁寧で、且つ意志の強さを伝えられるでしょう。

謝罪の場面

謝罪の時こそ「存じます」を使いたいものです。「所存です」は覚悟を伝えるニュアンスとなりますが、「存じます」は相手を慮る印象となります。上手に使い分けて誠意を伝えましょう。 「この度は、弊社のミスにより納期が大幅に遅れ大変申し訳ありませんでした。二度とこういったことが起こらないよう、体制の見直しを行いたいと存じます」 この場合、「体制の見直しをする所存です」とも言い換えられます。 「大変不躾とは存じますが、早急にお伝えするべきと判断し、ご連絡させていただきました」 「大変不躾と思ったのですが」を丁寧に言い換えています。やはり「存じますが」の方が目上の方に失礼にならない言い方となります。

間違いやすい「存じます」使い方例

前述にもありますが、「存じます」と似ている言い方として「存じあげます」「ご存知」があります。これは、「存じます」が謙譲語であることに対して、「存じあげます」は対象を人としており、「ご存知」は尊敬語となります。 主語の違いによって使い分けも必要で、このことが「存じます」の意味を曖昧に捉えてしまう原因となっているようです。

人やものの違い

例えば、「認識している」の意味で使う場合「存じております」「存じています」となりますが、認識しているものが「人」の場合は「存じ上げております」となります。 「この機器の使い方はお伝えしましたか?」「はい。存じております」 「昨日そちらにお伺いしたのが弊社の代表です」「はい。存じ上げております」 という使い方になります。認識している対象が、前者が「もの」であり、後者が「人」です。 なぜこのように対象によって使い方が変わるのでしょう。それは、「人」に対してより謙譲を強める必要があるからです。 「存じ上げる」には「上げる」がついています。これは「存じる」という謙譲の動詞につけることで、より自分がへりくだり相手を高める効果があるのです。 反対に、ものに「上げる」を使うと、ものに対して尊敬を表していることとなり不自然です。 したがって、対象の場合は「存じています」、対象が人の場合は「存じ上げております」となります。 ただし、相手の「名前」は大きく分けると「もの」ですが、「人」を表すため「人」と同様に考えます。 「お名前は存じ上げておりましたが、お会いするのは初めてですね」と使うのです。

尊敬語としての使い方

「存じる」を尊敬語として使う場合は「ご存知」となります。多くの場合、「認識している」意味で使われ、「考え」や「思い」は「意向」を使います。 例えば、先方へ認識の有無を訪ねる場合 「昨年度のイベントについて、最終来客数はご存知でしょうか」 「弊社の企業理念についてはご存知でしょうか」 もっと丁寧な言い方に「ご存知でいらっしゃいますでしょうか」があります。これは「ご存知」と「いらっしゃる」の二重敬語ではないかと思われがちですが、この場合は二重敬語にはなりません。 二重敬語とは、一つの言葉に二重の敬語を使用することを言います。たとえば「お読みになられる」は「〜する」の尊敬語「〜になる」に、さらに「〜られる」をつけて「なられる」としています。この場合は二重敬語となります。 「ご存知でいらっしゃいますか」は、「ご存知」に「いらっしゃる」で謙譲の意味を強調しているだけなので問題ありません。

「思う」「知っている」「考えている」は、普通に話している時にはあまり意識しませんが、ビジネスの現場や公の場、文書などの改まった場面では、たくさんの丁寧な言い方があり、戸惑うことも多いでしょう。 特に、主語によって使い方が違う、二重敬語など、尊敬語には難しいルールがあります。これらを間違いなく使うためには、基本の意味を理解するが必要です。 「所存です」「存じます」はどちらも「考え」を伝えるものですが、「所存です」は「努める」ニュアンス、「存じます」は「思っている」「認識している」ニュアンスとして考えると、理解しやすいでしょう。 特に、「所存です」「存じます」は、ビジネス文書を書くためにも使いこなさなければならない尊敬語です。正しく使いこなして、ワンランク上の人材を目指しましょう。