傷病手当金って退職後でも申請可能?失業手当等への影響や初回申請時の申請先は?

会社員の間に、怪我や病気で就業ができなくなった時は、「生活どうしよう。家族もいるし、ローンも残っている…」と本当に焦ります。また、そのことが原因で会社を退職せざるを得なくなった時は、絶望感に苛まれる人もいるでしょう。やはり退職後、先立つものは生活に必要なお金です。 そんな退職した時こそ、保険制度を活用しましょう。傷病手当金を初めて申請する人のためにも、ここでは、傷病手当金とは何かをしっかり理解し、退職後でも申請可能な要件、公共職業安定所(ハローワーク)の失業手当(基本手当)との違い、雇用保険の傷病手当金との違い、国保(国民健康保険)との違い、初回申請する場合の申請先や流れをまとめてみました。 退職後このような辛い窮地に陥った時でも、冷静に傷病手当金や失業手当をきちんと理解し、申請手続きを進めて、まずはメンタル面で落ち着いていきましょう。

初めて傷病手当金を申請する人にとっては申請先もふくめてちょっとややこしい部分もありますので、ここでしっかり理解しましょう。

傷病手当金は、病気休業中に被保険者とその家族の生活を保障するために設けられた制度で、被保険者が病気やケガのために会社を休み、事業主から十分な報酬が受けられない場合に支給されます。

法律でも、傷病手当金は健康保険法第九十九条に規定されています。

被保険者(任意継続被保険者を除く。第百二条第一項において同じ。)が療養のため労務に服することができないときは、その労務に服することができなくなった日から起算して三日を経過した日から労務に服することができない期間、傷病手当金を支給する。

傷病手当金 初回申請先

傷病手当金は、会社で加入している「健康保険組合」に申請します。

傷病手当金 支給要件

1.業務災害以外の事由による病気や怪我の療養のため会社を休まざるを得なくなったこと 業務時間内、また業務の理由よる休業は、労災保険となる可能性があります。ただ、うつ病など、私生活や職場環境などの複合的な要素が絡んでいる場合は、傷病手当金の支給要件に適します。 2.就業ができない状態であること 医師の診断結果をもとに、被保険者の業務内容を鑑み、健康保険組合が傷病手当金の支給の可否を判断します。 3.連続して4日以上仕事に就けないとき 療養のため会社を休んだ日から4日以上連続で休んだ場合、傷病手当金の支給要件となります。 4.休業しているときに、会社から給与の支払いがないとき 休業期間中も一定の給与を支払う会社もあります。その際は、傷病手当金の額より少ない場合は、その差額が支払われます。 5.加入している健康保険組合の正資格者であること 「任意継続被保険者」である期間に発症した病気、怪我の場合、傷病手当金は支給されません。 6.支払期間 傷病手当金を初回申請した支払い開始日より、最長1年6ヵ月です。その間に、仕事に復帰したが、再発して再度休業に入った場合でも、支払開始日より1年6ヵ月までとなります。 この期間も健康保険法第九十九条の4に規定されています。

傷病手当金の支給期間は、同一の疾病又は負傷及びこれにより発した疾病に関しては、その支給を始めた日から起算して一年六月を超えないものとする。

健康保険法第九十九条の4

傷病手当金 支給金額

基本的に傷病手当金の支給金額は、支給開始日前の1年間の平均給与の三分の二の額となります。 ただ、勤務期間が支払い開始日前に1年間を満たない場合は、「以前の継続した各月の給与の平均額」と、「加入している健康保険組合の被保険者の前年度9月30日時点での平均給与額」と比較して、比べて少ないほうの額を使用して傷病手当金の支給額が算出されます。

退職後でも傷病手当金は申請可能か

退職後、健康保険組合の保険資格を喪失したあとでも、下記の要件を満たせば傷病手当金は支給されます。

退職後の傷病手当金 支給要件

1.資格喪失した日の前日(退職日)までの被保険者期間が継続して1年以上あること。 2.申請する健康保険組合の加入期間が1年未満である場合、その直前に加入していた健康保険組合と継続して通算1年以上あれば傷病手当金の支給対象になります。 (前の健保の資格喪失日が今の健保の資格取得日と同日が条件。前の会社を退職した日から今の会社へ再就職した日の間に1日でも空きがあると支給対象にはなりません。) また、前の健保の「任意継続被保険者」であった場合は傷病手当金の支給対象にはなりません。 3.退職日までに現に傷病手当金を受けており、そのまま継続して受ける場合。 4.退職日以前に4日以上連続して休み(退職日を含む)、傷病手当金をまだ申請していない場合、上記1、2の要件を満たしているとき。 5.傷病手当金初回申請の傷病名が同一の疫病であること。 6.障害年金、老齢年金などの支給を受けている場合、傷病手当金は支給されません。(しかし、その額が傷病手当金より下回る場合、その差額は支給対象になります。) ※注意しなければならないのは、退職日に出社すると勤務可能と判断され、支給対象にはなりません。退職日に挨拶、引継ぎなど善意で半日でも出社すると傷病手当金は支払われないということです。 退職日は、「欠勤」か「有給」にしておくと要件を満たします。

退職後の傷病手当金 初回申請先

退職した会社で加入していた「健康保険組合」です。 退職後の健康保険は、この健康保険組合の任意継続か、国保(国民健康保険)に加入することになりますが、退職後の傷病手当金の申請先は、直前に加入していた健康保険組合です。

退職後の傷病手当金 支払い期間

傷病手当金の初回申請の支給開始日から最長1年6ヵ月間です。しかし、退職後、一時的に就業可能な状態になり、その後、再発して就業不能になった場合は、支給されません。 就業可能な状態とは、「働いた日」「医師が就業可能とみとめている日」のことを指します。 その場合は、傷病手当金の支給が停止されます。

退職後の傷病手当金 加入期間1年未満の場合の注意点

上記2.の1年未満の場合は、傷病手当金初回申請の際、以前(退職した会社の前に勤務していた会社)の健康保険組合に加入していた時の、「記号」「番号」を記入する必要があります。初めて申請する人は特に「もう前の健康保険証は返却しているので、わからない。」という人がほとんどだと思います。では、前の健康保険組合に電話して聞けばよいと思うのですが、資格喪失した人の「記号」「番号」は教えてくれない場合があります。その場合は、既に退職している事業所の所在地の「社会保険事務所」に聞けば教えてくれます。

退職後の傷病手当金 申請の流れ

退職後 傷病手当金初回申請先

退職後も、傷病手当金申請先は在職時に加入していた「健康保険組合」に申請します。申請書は、ホームページからダウンロードするか、郵送で送付してもらうこともできます。

傷病手当金申請書には、「被保険者記入欄」「医師記入欄」「事業主記入欄」があります。 1.被保険者欄に記入 ↓ 2.医師の診断証明欄に、医師が記入 ↓ 3.在職期間中の申請の場合 事業所が記入 ↓ 4.健康保険組合に提出 提出するのは被保険者でも、事業主でも構いません。 ↓ 5.健保で審査(健保に書類が到着してから約2週間程度)し、傷病手当金「支給決定通知書」「不支給決定通知書」がはがきで送られてきます。 個人情報保護の観点から、はがきの裏面(内容が書かれている部分)にはシールが貼られています。 ↓ 6.傷病手当金が指定の口座へ入金  申請時に、入金してほしい口座を指定できます。 ※退職後の期間の申請は、事業主の傷病手当金申請書記入は必要ありませんので、自身で提出することになります。

退職後 傷病手当金の申請はいつ提出すればいいのか。

傷病手当金は、初めて申請する初回申請のときから事後申請です。退職後も傷病手当金は、給与の補填という考え方なので、休業開始日から1ヵ月経過ごとに提出することが原則です。 (在職中の場合は、会社の給与計算の締め日に合わせて、毎月提出することが理想です。

※注意点 退職後、傷病手当金を初めて申請する初回申請時には、傷病で会社を休んでいると、被保険者と会社とのコミュニケーションが疎遠になり、会社が非協力的な場合があります。その場合は申請がおくれ受給がおくれるという事態に陥ります。その時に備え、傷病手当金申請用紙の自分の記入欄と医師記入欄の部分をコピーして保存しておき、会社からの返答がないということを健康保険組合に報告しましょう。

退職後 失業手当への影響

退職後にハローワーク(公共職業安定所)に申請して支給される失業手当(基本手当)と傷病手当金をダブルで受け取れるのでは、と思う人もいますが、それは出来ません。 国が定める失業状態は、下記のように定められています。

ハローワークに来所し、求職の申込みを行い、就職しようとする積極的な意思があり、いつでも就職できる能力があるにもかかわらず、本人やハローワークの努力によっても、職業に就くことができない「失業の状態」にあること。

よって、傷病手当金と失業手当は相反するものなのです。 傷病手当は、病気や怪我で就業できない状態。一方、失業手当は、いつでも就業できる意思と能力があるのに就業できない状態です。 退職後初めて申請し傷病手当金が支給されてから最長1年6ヵ月を経過して体調が回復し、いざ就職先をさがそうとしても、すぐには希望の職業に出会わないかもしれません。また、退職後1年6ヵ月経過すると、失業手当給付期間を過ぎている可能性があります。その時は、ハローワークの受給期間の延長制度を利用する方法があります。この制度は、病気・怪我や妊娠・出産等のために30日以上働くことができない場合に最大3年間延長することができる制度です。失業手当延長申請期間は、働くことができない期間が30日経過した日から1ヶ月以内です。

退職後 雇用保険から支給される傷病手当金

健康保険組合の傷病手当を説明してきましたが、加入している「雇用保険」にも傷病手当金制度があります。 これは、退職後ハローワークに申請し受給資格者である状態の人が、15日以上病気や怪我で就業できない場合に支給される制度。申請先はハローワークです。 支給金額は、失業手当(基本手当)と同じ金額になります。 就業できない期間が30日以上になる場合は、失業手当(基本手当)の受給期間の延長手続きをすることができます。延長は最大3年間。 健康保険の傷病手当金や労災保険の休業(補償)給付を受けている場合は、雇用保険の傷病手当は受給出来ません。

退職後 国保(国民健康保険)の傷病手当金はあるのか

日本は国民皆保険制度をとっているため、健康保険への加入が義務付けられています。退職後失業し無職の状態にある人のためにも国保の制度があります。  退職後は、直前加入していた健康保険組合の「任意継続」か、国保に加入することになります。どちらが保険料を安く抑えられるかが気になるところです。 それは、どちらとも試算してくれます。直前の健康保険組合に連絡すると、月々の保険料を算出してくれますし、居住地の役所(市役所、区役所)の国保を担当する部署に連絡すると、こちらも試算してくれます。 双方とも退職前でも、試算してくれます。 ただし、国保には傷病手当金の制度はありません。退職後、病気や怪我が発症し就業できない場合は、国保ではなく上記の雇用保険の傷病手当金の利用を検討しましょう。

まとめ

傷病手当金を初めて申請する人は不安も大きいと思います。しかし、退職後も要件を満たせば、健康保険組合の傷病手当金の支給を受けられます。 ただし、その場合は、退職後ハローワークの失業手当は受けられません。一方、失業手当を支給されている間、怪我や病気になり就業できない状態の場合、雇用保険の傷病手当金を受給できます。 病気や怪我で退職せざるを得なくなった時、退職後特に初めて申請する人は冷静に保険制度を最大限活用して、しっかりと療養に専念し、体調が回復してから就業しましょう。