【布石とは】意味・使い方・例文/「布石を投じる」は正しい?伏線との違いは?

目次

「布石って投じるものなの?」 そもそも「布石」の意味とは何なのか?

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さて、冒頭で聞き手の心に去来した「布石を投じるって、表現上合ってるの?」という思い。 「布石」+「投じる(意味=投げることを行う)」から来ています。 この「布石を投じる」という表現、 詳しくはあとからご紹介しますが、実は一般的な、囲碁から派生した表現である慣用句としては「布石を投じる」では「NG」なのです! そもそもその前に、「布石(ふせき)」って、日常的な日本語の感覚では、ちょっとピンときませんよね!? 一体この「布石を投じる」の「布石」の意味とは何なのでしょうか?そして、どうしてNGなのでしょうか? 順にみていきましょう。

「布石」の意味は、実は伝統的頭脳ゲーム「囲碁」で使われる石=布石。その役割や働き・意味・用語から派生した言葉だった!

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「布石」の意味を百科事典で調べてみたら、実は囲碁の用語から来たものだということがわかりました。

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 囲碁用語。1局の碁を序盤,中盤,終盤の3段階に分け古くは「石立 (いしだて) ,分れ,固め」といった。布石はその石立にあたり,起手から中盤戦が展開するところまでをいう。手数は一定しないが 40手から 50手ぐらいが普通。布石のほとんどは隅から辺へ発展するが,ときに辺や天元 (中央の星) から始ることもある。現在では政治,経済その他の一般用語にも転用されている。

他にも、この囲碁用語から派生して、「今後のために、事前に整えておく手はず」の意味も含まれているようです。

ふ‐せき【布石】 1 囲碁で、序盤戦での要所要所への石の配置。 2 将来のために配置しておく備え。「新党結成への布石を打つ」
ふせき【布石】 ( 名 ) スル ① 囲碁で、序盤に全局的な構想に立って石を置くこと。また、その打ち方。 「 -の段階を終わる」 ② 将来のためにあらかじめ整えておく手はず。 「将来への-とする」 「先を見通して-しておく」

辞書時点の中には例文で使い方も載っていますが、いろいろなケースを幅ひろく見てみないと、その意味などが理解しにくいですよね。

石を置くこと、あらかじめ置いておくことを「布石する」あるいはそうして置かれた石のことを「布石」と呼ぶのですね!

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布石(ふせき) 対局の初手しょてから序盤じょばん・中盤ちゅうばんにかけて、大まかに陣地じんちを囲かこうために、石を碁盤ごばん全体に散ちりばめるように打っていくこと。布石ふせきには、「三連星さんれんせい」や「中国流ちゅうごくりゅう」などの型かたがあります。
地を広げる [4]布石の考え方  碁を打ち初めのころを「序盤」と言います。少し石数が増えて込み入ってきた段階が「中盤」で、最後のころが「終盤」と覚えてください。その「序盤」の打ち方を「布石(ふせき)」といいます。  13図 布石は、ゆったり打ちましょう。

「え?ふせきって読むの? 俺ずっとぬのいしだと思ってた!」

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「『布石』=『ぬのいし』お前バカじゃね!?」といわれた経験のある人も多いかもしれません。 どれだけ議論したり説得しても、「そんな読み方や言葉はねーよ」と押し切られることも少なくないかも!! でも実は『布石』と書いて=『ぬのいし』という読み方をする熟語もあり、意味はもちろん、見た目~サイズも違います。

ぬの‐いし【布石】 道に沿うなどして、長くすえつけた敷石。ぬのしきいし。
① 布敷ぬのじきに用いる石。布敷石。 ② 土台下などに、長く敷いた石。

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イメージしにくいのですが、道路の縁石のようなケースや、こんな通路端に敷かれたケース・・・

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こんなケースを呼ぶことがあるようです。

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他にも、住宅や門他の土台などとして、柱や構造を安定させるために敷く、大き目の石を同じく「ぬのいし(布石)」と呼んでいることがあります。 ちょっと違うタイプでは、「建物の柱を支える沓石(くついし)や根石(ねいし)」もサイズのバリエーションはあります。「ぬのいし(布石)」では、それより大きめのものや、上り口や窓の出入りする位置などの下他に入れているものなどもあります。 この「布石(ぬのいし)」は基礎であったり通路などを仕切る大切な役割のある石ですが、その状態や作業状況に照らし合わせて「布石(ぬのいし)を投じる」とは言いません。 通常は「敷く(=敷き詰めるか、底に設置する)、打つ(=敷き詰めるか、底に設置する)、置く(=底に設置する)」などのように使うことが一般的です。

「布石を投じる(ふせきをとうじる)」は実際のところ、表現や意味上で正しいのですか?

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先ほど、ご紹介した各辞書や百科事典以外も含めて、熟語「布石」の用例としては「布石を投じる」を含む例文掲載はほとんど見られず、「布石を打つ」を用いた例文だけが、圧倒的に多く見られました。 では「布石を投じる」について、その正誤は、意味上?あるいは文法上?どのように考えればよいのでしょうか?

慣用表現「布石を投じる」のときの「布石」の意味は囲碁から生じた言葉。なので、囲碁に準ずる!

「布石(ふせき)」と読むとき、これにつづく慣用表現は「囲碁に倣ったもの」であることは、先ほどご紹介した百科事典の項目の中に明示されていました。 では、囲碁ではこの「布石」は、どう扱われているかというと・・・ ・布石を打つ ・布石を置く ・布石を作る といった使い方がされています。 この表現は日本語の慣用表現にも見られますが、囲碁と同じで全く問題がないものです。

「布石を投じる」以外にも「布石を敷く」「布石となる」「布石を残す」などの表現があるんだけど、全部同じ囲碁の石の意味??

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「布石を投じる」以外にも、これに類するさまざまな表現があります。 こちらから順にみていきましょう。

「布石を敷く」は意味的にアリなの?

そしてここから転じて、ビジネス表現などで、さまざまな計画の第一歩とするときに、この「布石(ふせき)」と「布石(ぬのいし)」の中間くらいの意味合いで「布石(ふせき)を敷く」という使い方をすることがあります。 現在では、この表現は 「正/誤のどちらかといえば誤」として介している人が多いようです。

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物事のスタートとなるときに、石を踏んで先に進むといった神事や信仰を残す地域や祭りもあるほか、神社や寺などでは、非常に貴重な横に長い大きな石を多数踏んでから正面に立ちます。 「敷いた石の上を歩く」といった意味が強いから、使われているのでしょうか?

「布石となる」は意味的にアリなの?

「布石となる」の場合、囲碁というよりもそこから「『布石』という試合上大切な位置を占める石」の意味だけを、囲碁での布石の役割だけを切り出して慣用表現に取り入れたものと現在は理解されています。 そのため、「布石となる」=意味:「石を打った結果、布石の役割をした」で、この表現はアリ! とされています。 囲碁番組の解説などを観ていても 例文:「あのイシ、何のためかと思っていたら、意外にも布石になりましたね」 例文:「このイシ、この手数でも非常に効果的な位置を残すことに成功していますね」なんていう表現もありますので、石を打った結果発生した状態などを表す表現としては広くOKなのかもしれません。

「布石を残す」は意味的にアリなの?

「布石を残す」はこれらの表現からさらに派生したものと考えられます。 正しい用法としてはあまり使用されているケースが存在しませんが、「『布石』として打ったものがそのまま有効な役割を残している」=「布石が相手に囲まれないまま石を残していて、優勢な状態を維持している」ということで、勝負に対してのプラスのイメージをさらに強調したものとしても考えられるかもしれません。 文書表現としてはあまり見られませんが、話し言葉などの中にはわりあい頻繁に聞かれるもの。 もしかするとそのうち、辞書に掲載されることもあるかもしれません。

結局のところ、「布石を投じる」は表記的にも意味的にも、使ってOKなの?

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さて肝心の「布石を投じる」という表現と、引き出される意味や由来についてですが、 ・囲碁の一般的な対局では白黒の碁石を投げることはない ・仮に、建築や建設の基礎となる布石(ぬのいし)に由来した慣用表現だったとしても、布石も投げることはない ことからこの表現が成立するというのは難しそうです。 また、囲碁将棋では

囲碁・将棋で、終局にならないうちに負けが明らかになったとき、自分の持っている石または駒を盤上に置き負けを認めること。投了。

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ということで「投げ」に対するプラスの意味を残してはいません。 他の「布石」にかかわる建設的プラスイメージに比べて、「石を盤上に置くことは投了=負け」のイメージを残すため。 「(+)布石を(―)投じる」≒「投了?」 でこの時点で負け戦をイメージさせるものがあります。 そのため、布石と組み合わせて使うことは、多くの日本人にとっては違和感を残す部分です。

そういえば、「石にまつわる投げる意味や表現のもの」って、どんなものがあったっけ?

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ここで思い出してほしいのが「石」×「投げる」で表される慣用句表現や四字熟語などの表現です。

・一石を投じる(いっせきをとうじる)  の意味

《水に石を投げると波紋が生じるところから》反響を呼ぶような問題を投げかける。「文壇に―・じる」

これに似た表現で

・波紋を投じる(はもんをとうじる)  の意味

事を起こす。反響を呼ぶ問題を提起する。波紋を投げる。「暴露記事が―・じる」 [補説]「一石を投じる」との混同から生まれた言い方か。

もともとこの「波紋を投じる」という慣用表現は存在しませんでした。 まあ「波紋」は水面などに広がる、石や水が落ちたとき、底から広がる円形の波からできる形。 「波紋そのもの」を人が掴んでも手中に波紋を残すことはできないため、投げることはできないのです。 ということで、今では一般的になっている「波紋を投げる」は「一石を投じる」との間との混同から生まれた言い方かと、辞書編纂スタッフは考えているようです。

ですがおそらく、海のいたずら者

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イルカなら

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「イルカだったら波紋、投げられそうですね♪」

仕切りなおして、「布石って投じるものなの?」 布石にまつわる正しい表記方法

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ということで「波紋を投じる」の発生に見られる混同と同じく、「一石を投じる」からの混同による「布石を投じる」が各所に見られるようになったと、現在は考えられています。 なるほど、似た表現からNGと考えると分かりやすいですね!

※ですが、たとえば、囲碁以外の文化系儀式などでは、「(布)石を投じる」ケースがあります。これと、「現代の慣用句でいう囲碁の布石」が誤認されているということも、あまり多くないながらあります。

他にもある「石×投」にまつわる表現と意味

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他にも「石×投」に関連したいろいろな表現がありました。 この機会にまとめて覚えてしまいましょう。

・石を投げれば××に当たる(※ ××=職業や年齢、世代や人物をまとめて表す表現)

たとえば、 例文:「新潟秋田ってさ、石を投げれば美人に当たるっていうくらいすごいよね」 例文:「京都はその辺の石拾って投げたら、ぼんさん(=坊主)に当たるやろ」 例文:「大阪では、その辺の石拾ったらそれが吉本芸人だったりしますから」 というくらいたくさん存在していることを表しています。 石を投げられたり、あるいは石になって(もしかすると自分で飛べるかもしれない可能性までを残す)いたりと、イロイロ大変な世界です。

・石投げの見得(いしなげのみえ)

歌舞伎・人形浄瑠璃の見得の一。石を投げるように左足をあげ、右手を頭上にさしあげて手のひらをぱっと開いてきまるもの。「勧進帳」の弁慶などにみられる。

・石を投げる(新約聖書による)

一般財団法人 日本聖書協会の新約聖書節ヨハネによる福音書8章1~11 によると

イエスはかがみ込み、指で地面に何か書き始められた。しかし彼らがしつこく問い続けるので、イエスは身を起こして言われた。「あなたたちの中で罪を犯したことのない者が、まず、この女に石を投げなさい。」

非常に広くさまざまな教会で使われている新約聖書。中にはオリジナリティあふれる解釈のところもあります。 教会での教えや、キリスト教研究者や法学史研究者によると「イエスの時代に、最初に、ひとによる裁きのありかたと導きを、身をもって示した」として説明を残すところも少なくないようです。 投石というのは、硬いところに当たれば「バチっ」とした音を残すものです。 ちょうど、「吸盤タイプ」のダーツを窓に投げたときのような音色や振動でしょうか? なかなか人に対しては投げやすいようで投げにくいものです。

・以卵投石(いらんとうせき)

ちょっと使用される機会が少ない四字熟語、以卵投石。

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音だけ聞くと「イラン」+「投石?!」と西アジアにある国が頭に浮かんでくる方が多くなっているほど、今では珍しい表現です。

そういえばイランにも、サウジアラビアのメッカという、イスラム教の聖地への大巡礼(=ハッジ)が存在します。

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ちなみに、意味はイランとは全く関係がなく。

《成》(卵を石にぶつける>)身の程知らずで自滅する. 【同】以卵击石

以卵击石=以卵撃石と同じ文字です。 例文:そんなに難しい実技を続けるなんて、以卵投石とは君のことをそのままあらわしたような言葉だよ。 例文:もしあの時、ハゲタカファンドやアルカイダとまともに戦っていたら、資金的にも以卵投石で自滅していただろうから。 といった使い方があります。

三つ、ちょっと転がっていますね・・・

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たしかに卵を石の代わりにいくら投げたとしても、ぶつけた先で壊れるのは卵ばかりなので、かなり弱い立場にあると思われます。 卵VSシャボン玉くらいなら、卵が勝つシーンもあるかもしれませんが、無事の着地は困難でしょうか・・・

もともと中国語の四字熟語で、日本の中に流入して 利用されているコミュニティもあるようです。 ちなみに、荀子-議兵に登場する表現です。

「布石」と似た意味で混同されがちなものとして「伏線」があるけれど、意味のどこがどう違うの?

さて、布石の意味としては、全体に「布石=前向きな、将来に向けての対策や建設的準備」である意味合いが多く含まれています。 これとよく似た言葉で、多くの人が間違ってとらえているのが「伏線」です。

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1.1 小説や戯曲などで、のちの展開に備えてそれに関連した事柄を前のほうでほのめかしておくこと。また、その事柄。「主人公の行動に伏線を敷く」 1.2 あとのことがうまくゆくように、前もってそれとなく用意しておくこと。また、そのもの。「断られたときのために伏線を張る」

「伏線」の意味として、一般的には「伏線=この後に何が起きるかを、こっそりかつ印象的に隠していたりほのめかす」といった意味合いがあります。 またその他に、「後でのことに備えて『それとなく』用意しておく」ことを表します。 「布石」と「伏線」はどちらも「これから後のことに対する準備」を表してはいますが、こういった違いがあります。 堂々と前向きに準備するのが布石 こそこそと準備するのが伏線 といったイメージでしょうか。

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ちなみに小説や漫画、映画。わかりやすいところでは、2時間サスペンスドラマなどでは、決まった時間帯に、最後まで見ていかないと謎解き上につながらないシーンなどを印象に残すもの。あれが文学や芸術作品でいうところの「伏線」。 2016年ごろによく流行った「伏線回収」は、この「伏線の理由が明らかになって、伏線を印象付ける場面や言葉などとつながった」ということを一般的には表します。

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また、鑑賞後の爽快感が各国の映画に比べても高いといわれるハリウッド映画や、アクション映画のようなタイプとは真逆の、イタリア映画、フランス映画の中でもとくに淡々と作品が進み、最後に「すっきりしない感が残る作品」ではもうすこし凝った扱いがされるものもあります。「伏線とつながるシーンや劇中のテーマが明らかにならなくても、あとからその伏線が他の作品や文化、慣習などにつながっていたり、伏線自体が与えたイメージや不安自体があきらかにされないながら別の形でクリアされる」といった手法をとることもあります。 この伏線回収のバリエーションについては、芸術家である作家や脚本家、映画製作者、番組作品制作者たちは非常に工夫を凝らすところ。 なかなか「この形だから伏線回収」と簡単に表せるものではありません。

ですが、時代劇やアニメ、アクション、スパイ映画やドラマ、小説などでは「伏線が解決していく過程によって、頭や心のすっきり感」を残す演出の中でも、伏線解決について、鑑賞する側が「あとから順を追って考えたときに、自分でなっとくできるレベルのわかりやすさを与える」ものでもあります。

「布石」とよく似た意味の「伏線」はどう使うのが正しいの?

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「伏線」の場合、 ●最初の意味に含みを持たせる、印象的なシーンを仕込んでおくときには「伏線を敷く」。 ●あとあとうまくいくように知られざる準備をしておくときには「伏線を張る」として使うことが多いようです。

「布石を投じる」についてご紹介しましたが、いかがでしたか?

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今回は「布石を投じる」の意味や語の由来から見る正誤。 複数の「布石」の存在。 「布石」をつかったさまざまな表現、例文。 「石×投」を使ったさまざまな表現、例文。 そして「布石」とよく似た「伏線」についての豆知識などをご紹介しました。

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語源である「囲碁の布石」にも、時代や、各国囲碁の影響、各時代の有名棋士などによる華やかな戦い方などによる変遷もあり、非常に奥深い歴史もあります。 「布石」という言葉に詳しくなったところで、由来の「囲碁の布石」も調べてみると、言葉を使うときに周囲の人を「あいつできるぞ!」なんて思わせる美しい表現が身につくかもしれません。